伝統をリスペクトしつつ、自由な挑戦でさらなる可能性を探る

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伝統をリスペクトしつつ、自由な挑戦でさらなる可能性を探る

 

「時代とともに進化し続ける 和紙の暮らし」を追求する長田製紙所(おさだせいしじょ)。八太夫の屋号を持つ長田家としては13代前まで遡ることができ、製紙業としては1909年(明治42年)、襖紙製造から始まった。現在は4代目 長田和也さんを中心に、襖紙や照明用和紙、タペストリー、和紙小物など幅広い和紙製品を手掛けている。そして、5代目となる予定なのが、長女 長田泉さんである。

「家業に携わるようになって約4年、まだまだ未熟。ようやく仕事がわかってきたという状況なので、5代目の自覚はまったくありません」と謙虚だ。しかしこの間、紙漉きの技術を習得し、和紙小物など新製品を企画・開発、各種イベントにも積極的に参加、本人曰く、「“毎日働く”を続けてきた」。そして今、力を入れているのがBtoB、企業間ビジネスである。

「ここは他産地以上に生活に合わせた和紙を作り、応用していける技術と可能性があります。その可能性を探し出し、市場をさらに広げていきたいんです」

 紙漉きの歴史や伝統、基本技術を重んじ、父と祖母が伝統工芸士という家業にあって、さまざまなことに自由に挑戦している泉さん。しかし決して、基本を疎かにしているわけではない。仕事がわかってきた今だからこそ、基本に立ち返っているという。その背景には10年前から父、和也さんが手掛けている天然紙制作がある。

「天然紙は一年に一度だけの制作で、完全無添加で原料を仕上げ、昔ながらのやり方で行うのでかなりの手間と時間を要します。でも実際に携わっていると、昔の方が今よりも効率的だったり、美しく仕上がったり、驚きや発見、課題が見えてきて、さらなる研究意欲がわいてきます。そして、技術の積み重ねが今につながっていることも実感するんです。もちろん、天然紙はすべてにおいて上質、美しい仕上がりです」

昔のやり方をリスペクトしつつも、「自分に合うものに変えていこう」とするハングリーなチャレンジ精神を持つ泉さん。企業に向けた彼女の制作や企画、提案はすでに始まっている。近い将来、それらが形となることで、越前和紙の可能性は今まで以上に広がり、さらなる進化と成長を遂げていくに違いない。

 

文:笹島美由起

Text/Miyuki Sasajima

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